
20代の恋愛と40代の恋愛、同じ「好き」という気持ちのはずなのに、その温度や質感は驚くほど違っています。
今回お話を聞いたのは、都内で働くアラフォー・独身女性、優菜さん(仮名・42歳)。会社員として働きながら、これまで何度か恋愛やパートナーシップを経験してきたという彼女に、40代になって変わったこと・変わらないことについて、じっくりとお話を聞きました。
20代の頃は、「結婚への焦り」や「周囲との比較」に振り回されることも多かったという優菜さん。けれど、40代を迎えた今、恋愛に対する向き合い方は当時とはずいぶん違ったものになっているようです。
変わったこと① 自分の気持ちを優先する姿勢
20代の頃は、相手にどう思われるかが恋愛の中心にあったという優菜さん。けれど40代になると、恋愛で意識する主語が『相手』から『自分』へと静かに変わっていったといいます。
好かれるための我慢をしなくなった
ーー 20代の頃と比べて、恋愛に対する向き合い方で一番変わったことは何ですか。
「我慢をしなくなったことですね。20代の頃は、気乗りしない誘いも断れなかったし、本当は嫌な冗談にも愛想笑いで応じていました。嫌われたくない一心で、自分の気持ちを後回しにしていたんです」
ーー 今はどうですか。
「正直に『今日はちょっと気分じゃないかも』と言えるようになりました。我慢を重ねて築いた関係は、どこかで必ずほころびが出ることを、何度か経験として学んだからだと思います。無理をして作った笑顔より、自然な表情でいられる関係の方が、結局は長く続くんですよね」
ーー 我慢をやめたことで、周りの反応に変化はありましたか。
「意外だったんですけど、自分の気持ちを素直に伝えるようになってから、関係がぎくしゃくするどころか、むしろ相手との距離が縮まることが増えました。取り繕わない分、相手も本音を話しやすくなるみたいで。我慢は優しさだと思い込んでいた時期もありましたけど、今思えばそれはただの自己防衛だったのかもしれません」
「好き」より「心地よさ」を基準にするようになった
ーー 相手を好きになる基準そのものも変わりましたか。
「変わりました。20代の頃は『好きか嫌いか』というシンプルな基準で動いていた気がします。でも、40代になってからは、そこに『一緒にいて心地いいかどうか』という視点が加わりました」
ーー それはどういうきっかけで気づいたのでしょうか。
「胸が高鳴る相手だけど一緒にいるとずっと気を張ってしまう、という恋を経験したんです。そのとき、どれだけドキドキしても、気を張り続ける相手とは長く付き合えないんだと、身体で理解しました。今は刺激的なときめきよりも、肩の力が抜ける安心感の方を選びたいと思っています」
変わったこと② 時間とエネルギーの使い方
社会人経験を重ね、自分の時間の有限さを実感するようになったことも、優菜さんの恋愛観を変えた大きな要因のひとつだといいます。
気乗りしない誘いに無理して応じなくなった
ーー 時間の使い方という面では、どんな変化がありましたか。
「20代の頃は『誘われたら断ってはいけない』という謎のルールに縛られていました。でも今は、気乗りしない誘いをやんわり断る選択肢を、自然に選べるようになったんです」
ーー 断ることへの抵抗はなかったですか。
「最初は少しありましたよ。でも、限られた時間をどこに使うかという感覚が研ぎ澄まされていくと、惰性で続く関係に時間を割く余裕がなくなっていくんです。その分、心から会いたいと思える相手との時間が、以前よりずっと濃く、大切なものになった気がします」
連絡の頻度やスピードに一喜一憂しなくなった
ーー 連絡のやりとりについても変化はありましたか。
「大ありです。既読がつくかどうか、返信が早いか遅いか。20代の頃はそんな些細なことに、一喜一憂して心をすり減らしていました」
ーー 今はどう捉えていますか。
「連絡の頻度やスピードは、相手の気持ちを測る絶対的な指標ではないと、経験から学びました。スマホを何度も確認する時間より、自分の仕事や趣味に使う時間の方が、よっぽど価値があるって気づいたんです。おかげで恋愛中も、自分のペースを保てるようになりました」
ーー 忙しい相手とのやりとりでも、不安になりにくくなったということですか。
「そうですね。忙しくて返信が遅い人には、それなりの理由があるんだろうなと自然に思えるようになりました。昔は『私のことなんてどうでもいいのかな』と不安になっていましたけど、今は『今は仕事が立て込んでいるんだろうな』くらいに受け止められます。相手を信じて待てる余裕も、歳を重ねたからこそ持てたものかもしれません」
変わらないこと① ときめきやドキドキへの憧れ
恋愛観がこれだけアップデートされても、優菜さんの中で変わらずに残り続けているものもあるといいます。その代表格が、理屈では説明できない「ときめき」への憧れです。
損得勘定だけでは恋はできない
ーー 40代になると、条件面を重視するようになると言われることもありますが、実際はどうですか。
「よく言われるんですけど、実際には条件だけで人を好きになれるほど、恋愛って単純じゃないんですよね。年収や肩書きをどれだけ並べられても、心が動かなければ何も始まらない。それは何歳になっても変わらない気がします」
ーー むしろ経験を重ねたことで変わった部分もありますか。
「損得勘定では測れない『なぜか惹かれる』という感覚を、以前より大切に扱えるようになった気がします。若い頃は条件に流されそうになることもありましたが、今は自分が本当に惹かれているのかどうかに、ちゃんと気づけるようになりました。」
「好き」という気持ちは何歳になっても特別
ーー 誰かを好きになる気持ち自体は、昔と比べてどうですか。
「誰かを好きになったときの、あの落ち着かない気持ち。連絡が来るたびに少し高鳴る胸。10代の頃も40代の今も、本質的には同じだなと感じます」
ーー 大人になると恋愛に冷静になると思われがちですが。
「『大人になれば恋愛に冷静でいられる』というのは、半分正解で半分は幻想だと思います。年齢を重ねても、誰かを好きになる気持ちそのものは今も瑞々しいままで。その感覚を失っていないことに、むしろホッとしています」
変わらないこと② 大切にされたいという願い
恋愛における立ち振る舞いは変わっても、根っこにある願いは20代の頃からほとんど変わっていない、と優菜さんは話します。それは、「大切に扱われたい」というシンプルな気持ちです。
大切に扱われたいという気持ちは変わらない
ーー 相手に求めるものという点では、変化はありますか。
「意見を尊重してほしい、ひとりの人間として対等に見てほしい。この願いは20代でも40代でも、まったく変わっていません」
ーー むしろ敏感になった部分もありますか。
「あります。年齢や経験を重ねたからといって、誰かに軽んじられて平気になるわけじゃないんです。もっというと、なめられたくないというか(笑)自分の価値観がはっきりしてきた分、対等に扱われていないと感じる違和感には、以前よりずっと敏感になった気がします」
安心して素を出せる相手を求め続けている
ーー 最後に、どんな相手と出会いたいか教えてください。
「取り繕わなくても大丈夫だと思える相手、弱さを見せても否定されないと感じられる相手ですね。そういう安心感への憧れは、年齢を重ねても変わりません」
ーー その願いがある限り、まだまだこれからですね。
「そう思います。どれだけ恋愛経験を重ねても、心からくつろげる相手を求める気持ちだけは、色あせることがないんですよね。40代の恋愛も、まだまだこれから何通りもの物語を描いていける余地があると思っています」
話を聞いていて印象的だったのは、優菜さんが「変わったこと」を語るときも「変わらないこと」を語るときも、どちらも過去の自分を否定していないということでした。無理をしていた20代の自分も、素直になれた40代の自分も、同じように肯定しながら、今の恋愛観にたどり着いているのが伝わってきました。
まとめ
優菜さんが語ってくれた、40代の恋愛で変わったこと、そして変わらないこと。
変わったこと
- 自分の気持ちを優先する姿勢
- 時間とエネルギーの使い方
変わらないこと
- ときめきやドキドキへの憧れ
- 大切にされたいという願い
変わったことは、これまでの経験が磨き上げてくれた、自分を守るための知恵です。そして変わらないことは、何歳になっても色褪せない、恋愛の本質そのものと言えるでしょう。
変化と不変、そのどちらも抱えながら恋をしていける。それこそが40代という年代の、豊かな強みなのかもしれません。今日誰かを想うときめきも、何年も前に感じたときめきも、きっと同じ輝きを放っているはずです。
文/AKI