令和6年国税庁の調査によると、働く女性の平均給与はおよそ333万円。そのなかで年収400万円を超えている人は、全体の3割ほどしかいません。つまり、400万円は決して低い数字ではなく、むしろ女性全体で見れば上位に入るライン。

「年収400万あれば、ひとりでも十分暮らしていける」という言葉は、数字の上ではたしかに正しいのかもしれません。けれど、その「十分」の中に、恋をする余白まで含まれているかというと、少し見方が変わってくるように感じます。

今日は、具体的な数字を眺めながら、恋愛について、そして自由についても、少し立ち止まって考えてみます。

手取り25万円で叶う暮らしと、心の余白は別のもの


生活費の計算はできても、心の満足度は思うように割り切れないものです。まずは、そのあたりを、数字とともに丁寧にほどいていきます。

家賃、食費、貯金5万円。それでも残る「なにか足りない」感覚

年収400万円の手取りは、月にするとだいたい25万円前後。都内でひとり暮らしをするなら、以下の内訳がひとつの目安になります。

家賃 7万円台

食費 4万円台

水道光熱と通信費 2万円

日用品 1万円

交際費や趣味 3万円

美容 2万円

そして、貯金に5万円ほど。

こう書き出してみると、意外にきちんと回っていくことがわかります。でも、生活が成り立つことと、心が満たされていることは、まったく別の話です。

「今日、誰とも目を見て話していないな」と。家計簿の帳尻は合っていても、心の帳尻までは、電卓では合わせられません。

貯金5万円という「安心」を、恋愛に回すという発想

毎月きちんと5万円を貯金に回せている自分を、誇らしく思う瞬間はたしかにあります。でも、その安心はどこか一時的なもので、通帳を閉じたとたんにまた元の不安に戻ってしまう。

それに気づいたとき、自分が求めていたのはお金そのものではなく、「大丈夫だよ」という安心感だったのかもしれません。

5万円という数字は裏切りませんが、人の温もりまでは補ってくれません。その5万円のうち、たとえば1万円分だけでも、誰かとの食事や、新しい出会いの場に使ってみる。そんな小さな見直しもひとつの選択です。

臆病になった私たちが、恋から遠ざかる本当の理由


複数の統計を見比べてみても、年収400万円に届く女性の割合は、20代のうちはごくわずかで、30代を通してもまだ1割に満たないケースがほとんど。40代に入って、ようやく1割に届くかどうか、というのが実情のようです。

つまり、アラフォーで400万円という数字に届いていること自体、実はかなり頑張ってきた証拠。それなのに、なぜか人生に前向きになれない。その理由を、少し掘り下げてみます。

「傷つきたくない」は、いつのまにか「お金があれば大丈夫」にすり替わる

過去の恋でうまくいかなかった経験があると、「今度は絶対に傷つきたくない」という気持ちが強くなります。その気持ちを抱えたまま、多くの人が向かう先が、仕事であり、資格の勉強であり、先ほどの5万円の貯金だったりします。

もちろんそれ自体はとても立派なこと。けれど、「経済的に自立していれば安心できる」という考えが、傷つくことからの避難所でもある。避難所にいる限り安全は保証されますが、そこに恋が訪れるかどうかはまた別の話です。

1割に届くかどうか、という数字が教えてくれる頑張り屋さんの落とし穴

40代前半で年収400万円を超えている女性は、10人に1人もいません。それだけ努力を積み重ねてきたということです。ただ、その努力の矛先がずっと「仕事」や「数字」ばかりに向いていると、人と心を通わせる筋肉のほうが、少しずつ使われなくなってしまいます。

経済的に自立していても、誰かに弱さを見せることが怖かったり、素直に「会いたい」と言えなかったりする。そんな自分に気づいたとき、少し悲しくなることがあります。

でも、それは弱さではなく、これまで自分をひとりで守ってきた証拠でもあります。自分を責める必要は、まったくありません。あなたは十分に頑張って生きてきました。

「ひとりで大丈夫」を少しだけ卒業してみる


「ひとりで大丈夫」と言い聞かせてきた日々は、決して間違いではありません。自分で立ってきた強さがあるからこそ、今のあなたがあります。

ただ、その言葉に少しだけ縛られて、誰かに頼る選択を遠ざけてはいないでしょうか。

ほんの少しだけ肩の力を抜いて、「ひとりじゃなくてもいい」と思ってみる。その小さな変化が、思っている以上に心を軽くしてくれるかもしれません。

誰かと分け合う暮らしが教えてくれること

ひとり暮らしの合理性に慣れてしまうと、誰かと生活のペースを合わせることが、途端に面倒に思えてくることがあります。自分のタイミングでご飯を食べ、自分の好きな時間に眠る。それはとても快適です。

でも、たまに友人の家に泊まり、誰かの生活音を聞きながら眠った夜、思いのほか安らいでいる自分に気づいたことはありませんか。

効率だけでは測れない心地よさが、人と暮らす時間にはたしかにあります。誰かを想う気持ちも、きっとその延長線上にあるものだと思います。

足りないのは生活費じゃなくて、勇気かもしれない

年収400万円あれば、月25万円の手取りで生活は成り立ちます。それでも一歩を踏み出せない理由があるとすれば、お金以外の要素が影響している可能性もあります。

勇気は貯金のように月々5万円ずつ積み立てられるものではなく、一歩踏み出したその瞬間に、はじめて生まれるものです。だから足りなくて当たり前ですし、焦る必要もありません。

自由に生きるためのお金の使い方、心の使い方


数字ばかり追いかけてきたからこそ、ここからは数字だけでは測れないものについて話したいと思います。

交際費3万円の使い道を、少しだけ広げてみる

家計簿に書き出した交際費や趣味の3万円は、友人とのランチやカフェに消えていくことが多いのではないでしょうか。それ自体はとても大切な時間です。でも、その一部を、新しい人と出会う場や気になっていた誘いに使ってみる。

将来のために貯金をすることは大切ですが、通帳の残高を増やすことばかりに気を取られて、心の余白を後回しにしていないでしょうか。余白のないスケジュールには、新しい出会いも、新しい気持ちも、なかなか入り込めません。

恋をする自由も、しない自由も、自分で選べる

誰かを好きにならなきゃいけない、というプレッシャーに応える必要はどこにもありません。ただ、「したくない」のか「怖くてできない」のかは、自分自身で一度きちんと見極めてみましょう。

前者なら、それはあなたの立派な選択です。後者なら、それは変えられる余地がまだ残っている、ということでもあります。

どちらであっても、選んでいるのはいつも自分自身であって、他の誰かでも、月々の貯金額でもありません。

まとめ

年収400万円は、女性全体で見れば上位3割に入る、たしかに立派な数字です。手取り25万円のなかで家賃を払い、食費をやりくりし、5万円を貯金に回す。それだけの生活力を、あなたはもうすでに持っています。すごいことです。

でも、恋をするための心の余白や、傷つくことを引き受ける勇気までは、その家計簿のどこにも書いてありません。お金は生活を支えてくれますが、心を支えてくれるのは、結局のところ人とのつながりかもしれません。

臆病なまま、トラウマを抱えたまま、それでも構いません。焦らず、交際費の中からほんの少しずつ、心の余白を取り戻していく。その先に、恋をする自由も、しない自由も、静かに待っているような気がします。

 

文/AKI